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東京高等裁判所 昭和59年(行コ)39号 判決 1986年1月29日

東京都新宿区矢来町一一二番地一〇五号

控訴人

藤嶋守

右訴訟代理人弁護士

松井繁明

宮原哲朗

東京都新宿区三栄町二四番地

被控訴人

四谷税務署長

関明

右指定代理人

榎本恒男

三浦道隆

山田清人

河西哲也

吉田清志

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五〇年三月八日控訴人の昭和四六年分ないし昭和四八年分の所得税についてした各更正及び各過少申告加算税の賦課決定(ただし、昭和四七年分については審査裁決により一部取り消された後のもの。)をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文一項と同旨

第二当事者の主張

原判決書四枚目表三行目中「納税地が」の下に「原判決」を、同四行目中「所轄する」の下に「世田谷」を、同五行目中「なつた。」の下に「更に、本訴提起後、控訴人の納税地が肩書地に移動したため、被控訴人がその訴訟上の地位を承継した。」を、同二〇枚目表三行目中「二四二条八号」の下に「(昭和五五年法律第八号による改正前のもの。)」を加えるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

第三証拠関係

原審及び当審における本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は、次につけ加えるほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決書三二枚目裏一行目、同三六枚目裏五行目、同三九枚目表六行目中「原告本人尋問」を「原審における控訴人本人尋問の結果」に改め、同四三枚目裏三行目中「原告は、」の下に「原審において」を加える。

2  当審提出にかかる甲第一三〇、第一三一号証の各一ないし、六、第一三二号証の一ないし一二をもつてしても、控訴人の昭和四六年分及び昭和四七年分の人件費を実額で認定することはできない。すなわち、控訴人は、当審において右甲号証は人件費等について控えていた大学ノートから一年分をまとめて転記したものであり、その主たる目的は借入れに関し国民金融公庫の職員から指導を受けたためである旨供述しているが、甲第一三〇号証の一ないし三によれば昭和四六年一月から六月までについては右期間の雇人であると主張する木村重次の氏名も支払つた給与額の記載もなく、また、控訴人が原審において右大学ノートに基づき右木村と確認しあつて作成した報告書であると供述している甲第六〇号証に記載された支給額とも一致していないこと(もつとも、控訴人は、この点につき、当審において右原審における供述は誤解に基づくものである旨訂正しているが、他方、右大学ノートは雨漏りでぬれてしまつたため昭和五一年ころ控訴人の妻が廃棄し、控訴人もそれをその当時知つた旨供述しているのみならず、右供述の訂正は被控訴人から右不一致を指摘された後になされていることに照らし到底措信できない。)、本件記録によつて明らかな右甲号証の存在については原審において全く主張されたことがなく、控訴人の人件費の金額についての審査請求、原審及び当審における主張のいずれとも右甲号証の記載が一致していないことを等の事実に照らし、右大学ノートの存在及び右甲号証の記載内容の正確性には多大な疑問が存するといわざるをえず、到底採用することはできない。したがつてまた、右甲号証の記載内容が借信できることを前提とする当審における控訴人の供述も措信し難い。

また、当審提出のその余の甲号証も、控訴人主張の雇人がいたことを推認することができるにすぎず、これをもつて人件費の実額を把握する資料とするには足りないものというべきである。

二  したがつて、被控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、これが取消しを求める本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人に負担させることとして、主文のように判決する。

(裁判長裁判官 舘忠彦 裁判官 新村正人 裁判官 赤塚信雄)

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